窓を機能させるために必要な「ガラス」の性能は? その2

 

 

 

 

厳しい冬の気候だからこそ、生命力を感じる緑の植栽を楽しみたい。

 

 

 

中世のバイエルン王も、その建設を熱望したと言われるガラス温室「オランジェリー」。

 

 

素材技術の進歩によって、誰もが一年を通して緑と共に過ごし透明天蓋空間の魅力を享受

 

できる時代が、ようやく到来しました。

 

 

 

(写真)釧路市のフィッシャマンズワーフに併設されたガラス空間「EGG」

 

 

 

もちろんこの空間の主役は植物であり、人間はそこを通過するか短時間滞在するだけの存在

 

です。植生の生育条件によっては温度変化の幅に制限はあるものの、光合成に必要な日射量は

 

外界の変化をそのまま受け入れるだけでよく、積極的に調整される必要はありません。

 

 

つまり植物の健全な成長には好適な環境の生成が、ガラス温室の設計条件となります。

 

 

 

(写真)通年で植栽の魅力を感じることのできる、ガラス歩行空間

 

 

 

現代では食物の生産工場にもこの技術が生かされるようになり、知らず知らずのうちに

 

私たちの生活の中に定着するようになってきました。

 

 

いわゆる、ガラスを用いた植物のための環境技術の創生です。

 

 

 

人間の健康にとって必要な環境は、ガラス建築で創生可能なのか?

 

 

 

軸組構造の「間戸」に板ガラスを採用しようとする試みは、その発生の歴史から考えても

 

ごく自然なことでした。しかし四季の気候較差が大きな日本の気候では、透明な窓から

 

得られる開放感だけでは相殺できないほどの環境劣化が、開口部のガラスによって引き

 

起こされてしまうことも、容易に想像ができます。

 

 

 

(写真)カーテンを閉めておくことを前提にした、開口部のデザインが乱立。

 

 

 

 

ガラス被覆空間に必要なのは、断熱性能だけなのか?

 

 

開口部を断熱性能の脆弱なガラスで被覆することによって生じる寒さの室内への侵入や、

 

隙間風や結露を防止するため、建具を含めたガラスの熱性能向上に資する技術の開発が

 

多方面で図られてきたことは言及する必要もないでしょう。

 

 

 

(写真)フランクフルトの住宅展示場で常設されている、ガラス建築の例

 

 

 

 

日射調整を、ガラスの性能だけで解決するのは無理がある。

 

 

一方で、ガラス面に入射する日射量は季節変動が大きく、また室内側での日射需要量は

 

季節依存性が高いことから、断熱性能の高度化が一定の水準に到達すると日射透過量の

 

調整が新たな課題として顕在化することになりました。

 

 

深い軒の庇や外付けブラインドなどの日射調整機能を持たないガラス被覆建築では、いきおい

 

日射遮蔽性能の高いガラスを採用することになりますが、日向にいても温かく感じることの

 

できない室内環境の違和感は、静的なガラスの性能だけでは払拭することができません。

 

 

 

(写真)窓は、「ウチ」と「ソト」をつなぐ情報の結節点として機能している。

 

 

 

 

日射調整のために眺望を犠牲にするのは、窓の機能の半分を諦めることに等しい。

 

 

窓ガラスの面積が大きくても、日射調整やプライバシー確保のためにカーテンやブラインドを

 

常に閉じておく必要があるとするなら、結果として閉鎖感の強い室内環境を恒常的に創生する

 

ことになってしまいます。

 

 

 

(写真)視界を意識した現代住宅の「窓」(設計・施工:SUDOホーム)

 

 

 

プライバシーを確保しながらも窓ガラスから入射する太陽光の量を調節するための工夫が、

 

現在の建築デザインでは大変重要になっています。

 

 

京都に代表される町屋建築に見られるような坪庭のように、「ウチ」に向かって開放する

 

という伝統的な都市建築の発想を、もう一度見直してみる必要もありそうです。

 

 

 

(写真)プライバシーの確保に配慮したウチとソトをつなぐ窓

 

 

 

断熱、日射取得量の任意な調整、そしてプライバシーの確保をどう実現するのか?

 

 

 

外界と完全に隔絶される可能性のある組積造建築では、外皮に穿たれる開口部が光と空気を

 

取り入れるための大変貴重な経路であり、その拡張を希求しながら建築技術は進歩してきました。

 

 

い方で、大開口が比較的得やすい軸組工法でガラスを用いるとき、断熱性能に加えて日射や

 

プライバシー確保など、経時的に変化する住要求に対応するデザインが不可欠になります。

 

 

窓ガラスには、断熱性以外にも重要な課題がまだ残されているようです。

 

 

 

 

 

 

■室内気候研究所

公式HP : http://iwall.jp/

Twitter:  https://twitter.com/i_wall_

 

        

 

 


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