「熱中症」の危険から身を守るのは、まず「断熱」!
消防庁の発表によれば、2019年6月3日から9日までの期間で熱中症の疑いで救急搬送
された人の数は、全国で1,227人だったそうです。猛暑日が続いた連休明けを含め、
これまでの累計数は近年にないペースで増加しており、本格的な夏の到来でさらに
熱中症のリスクは高まっていくものと考えられます。
(写真) 首里城にある、夏を旨とした伝統的な和風座敷
「住宅内熱中症」の発症数は、年々増え続けている。
「熱中症」とは人体が高温の環境にさらされることで発汗が連続的におき、体内の水分量が
減少することで熱失神や熱痙攣のなどが症状化する健康障害を指します。
重症化すれば致死リスクを伴う恐ろしい症状ですね。
上の図は熱中症死の分析結果ですが、死者の総数1,100人に対し65歳以上のご長寿さんの
割合は約40%と高く、しかも住宅内で「熱中症」を発症して亡くなるご長寿さんの割合は
80%にも達しています。「住宅内での熱中症(住宅内熱中症)」はますます増加傾向にあり、
住宅の熱環境調整は喫緊の課題と言えるでしょう。
(写真)日射遮蔽をした実験モジュールの熱画像
蒸し暑い寝室の環境が「就寝時熱中症」のリスクを高める。
近年、寝室における「睡眠時熱中症」のリクスが取りざたされるようになってきました。
住宅における熱中症の全死亡者に占める「就寝時熱中症」の死亡割合が40%程度にまで
高まっていて、夜間の環境管理の大切さが叫ばれるようになってきました。
(写真)暑さ・寒さを感じない、高断熱住宅の室内の様子(設計・施工:北央建設)
それでは夜間になっても室温が下がらない住宅は、どうして存在しているのでしょうか?
下の図は日本全国にある住宅ストックを、断熱性能ごとに分類して比較した図です。
驚くべきことに約80%の住宅が無断熱か、40年前の脆弱な断熱性能基準レベルにしか過ぎず
日射によって暖められた屋根からの熱侵入を防ぐことができていないのが現実です。
「就寝時熱中症」の発症メカニズムは比較的容易に理解することができます。
蒸し暑い寝室で就寝すると、体温の上昇を抑制するために自律的に発汗が助長され、
体内水分量が徐々に低下します。そのままの環境で就寝し続ければ水分量はさらに低下し、
やがて熱中症の症状が生じるのです。
就寝時熱中症の発症時間帯が明け方に多いのもこのためです。
(写真)古民家風のデザインを採用した娯楽施設の室内
人体は適切な体温を維持するために、体内深部からは外部環境に向かって常に熱が環境へと
放散されています。室温の上昇とともに湿性放熱の割合は相対的に増大していき、室温が
28℃になると多くの人は発汗し始めます。
汗は血液成分から生成されますので、発汗の進行とともに体内の水分量は減少していく
ことになるのです。
就寝が28℃になると、発汗が生じて「睡眠の質」を低下させる。
就寝時に発汗が続くと「就寝時熱中症」のリスクが高まるだけでなく、いわゆる「睡眠の質」
が低下する原因にもなります。
「ぐっすりと寝て、スッキリと起きる」ことで新陳代謝は促進し、昼間に酷使した免疫
システムが修復されて病気にかかりにくいカラダが再生されるのです。
(写真)断熱・蓄熱・遮熱でデザインしたPPHの寝室(設計・施工:北洲ハウジング)
「睡眠の質」の低下は、翌日の知的生産性の低下、食欲の減退、免疫力の低下、うつ病の
発症などの原因ともなりかねませんので、寝室の環境調整は欠かすことができないのです。
■室内気候研究所
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- 2019.06.14 Friday
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