木質バイオマス発電は日本の森林を救えるか?

 

2017年10月6日の読売新聞朝刊に『バイオマス発電 商社進出 〜「有望な市場」計画相次ぐ』という記事が掲載されました。どうして商社はバイオマス発電に進出しようとしているのでしょうか?その目的は? 化石燃料の輸入はこれまでの事業の大きな柱ですから、代替エネルギー事業に転換しようとする商社の真意に素朴な疑問を持ったのです。

 

「ゼロエミッション」という名の「環境ビジネス」。

 

木質バイオマスは燃焼させて熱エネルギーを利用しても、「適正な植林と森林保全が担保されれば」二酸化炭素ゼロエミッションであると言えます。植物の成長過程で空気中の二酸化炭素を固定してくれるので、大気中の二酸化炭素量は増加しないと考えられるからです。さらに、バイオマス発電と電気自動車を組み合わせると「ゼロエミッション・カー」が実現できると考える人もいるくらいです。もちろん前提条件が満足されればの話ですが。

政府は木質バイオマスを化石系燃料に代替させることによって、 地球温暖化ガスの一つである二酸化炭素の増加を抑制できると考えて、地球温暖化防止対策の有効な手段の一つとして推進してきました。福島での事故を受けて、政府は2030年度時点で再生可能エネルギーの割合を22〜24%程度まで引き上げるという目標を掲げています。(http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/policy/biomass_energy/)

 

バイオマス発電の燃料はほぼ全量が輸入されている。

 

バイオマス発電の燃料は木質チップですが、現状ほぼ全量を輸入に頼っています。読売によれば、商社各社は今後大幅に木質チップの輸入量を増加させる計画を発表しました。輸出国の森林が再生されていることを心から祈らざるを得ません。

 

一方で日本の山林は荒廃が進み、二酸化炭素の吸収力を急速に失いつつあります。急峻な地形や搬送用の林道が未整備であること、森林事業に従事する人材が不足していることなど諸課題はあるものの、バイオマス資源として間伐材などの価値を見いだすことができれば、復活への道筋も見えてくるのではないでしょうか。バイオマス発電の普及が日本の森林の再興の端緒となることを強く期待したいところです。

 

木質バイオマス発電が稼動すれば、年間1兆円が電気料金に上乗せされる可能性。

 

バイオマス発電によって発生させた電力は国の固定価格買取制度によって一般の電力より高く買い入れることを電力会社に義務付けています。さらに電力会社は賦課金として利用者からその差額を徴収しており、実質的には再生エネルギーの買取費用は国民負担となっているのです。見えない電気料金として不評を買っている制度です。買取価格引き下げ前の駆け込み申請分を含めた700万 [kW]の発電所が今後稼動すれば、年間約1兆円以上が電気料金に上乗せされるとの試算もあります。日本の森林復活にこの賦課金を使用して欲しいと考えるのは私一人だけではないと思います。縦割り行政を是正し国民の十分な理解を得ながら、林野庁など関係機関とも連携した政策の推進が引き続き望まれるところです。

 

「二酸化炭素主犯説」が「環境ビジネス」を支えている。

 

1997年12月京都市国立京都国際会館で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)でいわゆる京都議定書採択されてから、二酸化炭素の排出量削減を目標とした環境ビジネスが勃興し、隆盛を極めるようになってきました。

 

気候変動の二酸化炭素濃度主犯説には現在でも科学的な異論が絶えないにもかかわらず、経済合理主義と強く結びついてしまった環境問題は次世代の人々の足かせになりかねないと、一人の研究者として不安を抱き続けています。地球環境を守り、平和な世界を実現しようとする理念に異を唱える人はいないと思います。一方で、単なる学説を真理であるかのように喧伝し、利用しようとする環境ビジネスの行き過ぎた進展は、却って地球の持続可能性を損なう可能性があります。二酸化炭素削減という一つの目標が、全ての判断基準として取り扱われることを大変危惧しているところです。

 

室内気候研究所は、今後も環境問題について研究を継続していきす。

 

☆室内気候研究所

公式HP http://iwall.jp/

 

 

 


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