蒸暑地域の環境について研究を開始しました。

 

室内気候研究所は積雪寒冷地の室内環境づくりの研究を開始してから、早いもので35年が経過しました。恩師や周囲の皆さん、家族にも支えられこれまで研究を継続できたことは、本当にありがたいことだと心から感謝しています。避けていた訳ではないのですが大の暑がりが災いして、これまで南方にはなかなか足が向きませんでした。節目の年を迎えた今年は心機一転。南の国から北国の生活を再考してみるために、沖縄やシンガポールなどの蒸暑地域を訪問して、環境を肌で感じるところから研究を開始しました。

 

木陰を見つけ、微風を楽しむのが夏の暮らしの楽しみ方。

 

夏至の那覇では太陽の南中高度が87°にもなりますから、頭上から南国の強い日差しが照りつけ、自分の影を見つけることすらできません。暑さというより痛さを感じるほどの強烈な日射ですが、木陰に入るとホッと一安心。微風が海から流れてくると本当に気持ちが良いものです。大屋根の深い庇で守られた縁側の涼しさは、南国の木陰を人工的に創出する工夫だと言えるかもしれません。

 

(写真1 首里城広間の縁側)

 

建築的な理由で庇がつけられない時には外皮の外側に通風を妨げない桟を設置して、日射が室内に直接入射したり壁が熱くなりすぎないよう工夫します。植栽を施すことで蒸散作用も手伝って涼しい風が通り抜けるようになります。グリーンカーテンや屋上緑化は、いずれも現代版の木陰創出に他ならないではないかと考えられます。

 

(写真2 沖縄県立芸術大学のファッサード)

 

国際建築主義は風土を超越することに成功したのか?

 

建築の基本的な考え方の中には、インターナショナリズム(国際主義)とリージョナリズム(地域主義)という二つの大きな流れがあります。地域や社会の違いを無視して広まったモダニズムの均一性へのアンチテーゼとして、その土地の風土に適したデザインを首尾一貫して実践しようとするのがリージョナリズムの約束です。完全な工業製品による建築建設が可能になった時代から、合理主義や機能主義は新次元の美を獲得することになりますが、巨大な設備と膨大なエネルギー消費なしに居住性を満足させることができなくなりました。現代では人類の持続可能性が危ぶまれるほどに発達した都市建築は、新たな指針を必要としているようにも見えます。

 

帝国主義的覇権争いが盛んだった植民地時代に建設されたシンガポールの新古典主義建築はリニューアルが計画的に実施され、現在もその威容を誇っています。でも暗くじめじめした室内は、さぞ暮らしにくかったのではないでしょうか?

 

(写真3 ビクトリア・シアター&コンサート・ホール)

 

木陰は日射遮蔽ガラスに、そよ風はエアコンに取って代わられた。

 

シンガポールの金融街・ラッフルズプレイスの東にある重厚な建物がThe Fullerton Singaporeです。1928年に郵便局として立てられたドリス式の柱をもつこの建造物は、2001年に大規模な改装工事を終え、最高級ホテルとして旅行者の憧れの的になっています。その背後にあるのが金融街のスカイスクレーパー。土地が何より高価なシンガポールではビルの超高層かは必須であり、高層化に向けた技術的、視覚的な挑戦が建築家たちを引きつけてきたことの象徴と言えるでしょう。

 

(写真4 フラートンホテルと金融街)

 

今回宿泊した高層ホテルのラウンジからはマリーナ地域とそれに隣接したオフィス街、対岸にはラッフルズプレイスを一望することができます。一日中を眺めていても、時々刻々と変化していく風景に飽きることはありません。でも快適さの中に少し違和感があることに気づきました。外は陽光が燦々と降り注ぎ夏の暑さがそこにあるのに、窓辺では全く日差しの暖かさを感じることがないのです。

 

ビル全体が遮熱ガラスで覆われていて、あたかもサングラスをかけたビルの中に自分がいるという違和感が消えていくことはありませんでした。厳しい冬を終え日差しが日に日に強くなっていく春の窓辺。ポカポカとした春の快適さを捨て去ってまでエネルギー消費量を抑制しようとする行為の是非を考えずにはいられませんでした。

 

北国の気候風土にあった建築デザインと建築材料の選択は、まだまだ最終的な解が見つかったとは言えないのかもしれません。室内気候研究所はこれからも北国の快適な暮らしのために研究を続けていきます。

 

(写真5 ホテルから見た金融街とベイエリア)

 

幸運にも水辺にある木陰の涼しさをホテルで体験してきました。最高でした。

 

 

☆室内気候研究所

公式HP http://iwall.jp/


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